先日、気になったニュースがありました。
4月8日付日経新聞
弘前大学とサンスターはサケから抽出したプロテオグリカンが女性の更年期障害の脂質異常を予防する効果があることをマウスの実験で確認し、特許を取得しました。
弘前大学のプレスリリースにも掲載されています。
【プレスリリース】サケプロテオグリカン特許「プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む経口組成物(6629024号)」の取得について(保健学研究科)/弘前大学
このニュースを見て最初に思ったことは、「サケはかなり身近な食材!抽出した成分に効果があるのなら、家でも簡単につくれるかも!」
さっそく特許を読んでみました。
該当の特許はこちらですね:
特開2017-66097
発明の名称:プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む経口組成物
出願人:国立大学法人弘前大学、サンスター株式会社
特許明細書を読んだあと……弘前大学とサンスターに心から謝りました。
こんな大企業が発表する内容、家で簡単にできるわけがありません。はい。
抽出対象は、サケはサケでも「軟骨」からの抽出物。しかも頭部(主には鼻軟骨)。ええ、スーパーでは手に入りません。
考えてみれば、スーパーで売っているもの、飲食店で食べるもの含め、サケに関しては軟骨はおろか骨に出会うこともほぼないですよね。
頭部を見ることなんて日常生活では皆無です。
明細書の中にも記載がありました。
通常、魚類(特に、サケやマス) が食品製品等へ加工される際に頭部は廃棄されることから、頭部軟骨の入手コストは安く、大量に安定供給され得るという利点もある。
特開2017-66097「プロテオグリカンを含有する魚類軟骨水抽出物を含む経口組成物」から引用
食品関連の特許ではこのような「通常では廃棄されるもの」を原料にしたものが多く見受けられます。これは一見、原料を安く仕入れることができるので廃棄物(となるもの)を購入する側にメリットがあるように見えますが、提供する側も「廃棄料」がまるまるかからないので、非常に大きなメリットがあります。
廃棄料って、実はめちゃくちゃ高くでコストになるのですよ……
特許の内容を読んでいると、今回の発明は「サケからプロテオグリカンを抽出すること」よりも、それが「脂質異常を予防すると実験で確認できたこと」に重点が置かれています。
プロテオグリカンとは、特殊な構造をもつ糖とタンパク質の複合体で、軟骨の主成分でもあります。身体組織や皮膚組織を維持し、組織維持修復に大きく関係している物質です。
プロテオグリカンに関しては過去から研究が進められ、各社から複数の特許が出願されています。今回はその「新しい用途」が確認できたという部分に大きな価値があるのですね。
抽出工程に関する記述はいたってシンプルで、簡単にまとめると、
1、冷凍保存しているサケ頭部をもってきて
2、その中から鼻軟骨を取り出して
3、流水で脱脂肪処理をして
4、ブレンダーで粉砕し
5、95℃の熱湯でぐつぐつ煮込み
6、不純物を取り除いたあと抽出液を凍結乾燥
これでサケ鼻軟骨抽出物の凍結乾燥粉末(フリーズドライ)を得ることができます。
特に何を入れるわけでもなく、文字通り「水抽出」です。
この工程だけ見ると「家でもできそう!」と思ってしまいますが……
もう一度言いますが、原料は「サケの鼻軟骨」です。残念ではありますが、やっぱり入手不可能です。。。
ということで、メーカーのサンスターから発売されるのを待ちましょう!
ちなみに、サンスターといえば歯磨き粉のイメージが強いですが、実は健康食品も広く展開しています。サプリや機能性食品の知見もあるので、今回のような研究はかなり前から行っている企業です。
おそらく数年以内には商品化させるはず。そのときは私も更年期障害を考え始めないといけない年齢になっているはず?なので、今後の展開に期待です!
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