食の魅力・素材の魅力

日本一わかりやすく特許を解説!有名企業が発売する「免疫力を高める食品」はどこがすごいのか?

新型コロナウイルスの感染を予防するために、「免疫力を高める食材」が注目されています。この傾向もあって、ネット上ではさまざまな健康食品が取り上げられ、テレビのワイドショーでも連日にぎわっています。

しかし、それって本当に免疫力を高める効果があるのでしょうか?

実際のところ、素人にはわからないですよね。

中にはこれを「商機」と捉え、実は全く効果がない食品を「さも効果があるように見せて」販売する例も……。

私はこのようなとき、下記のポイントに着目します。

  • 新型コロナウイルスが発生する前から開発されているものなのか
  • 効果がちゃんと証明されているものなのか

後者に関して最も権威ある「証明」のひとつが特許です。

今回は上記2点を切り口に、「免疫力を高める」という効果が証明され、かつその手法と効果で特許を公開し、特許文書内にもしっかり明記されているものを2つご紹介します。

どちらも、日本では有名な大手食品メーカーが開発したものです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。

乳酸菌のゆりやんレトリィバァ参上!?【カゴメ株式会社】

まずはじめにご紹介するのが、カゴメ株式会社が発売する「ラブレ」シリーズです。

こちらは2006年に初めて発売され、爆発的ブームになりました。過去にはヨーグルトタイプがありましたが、現在はドリンクタイプのみの展開ですね。

発売からしばらくは吉永小百合さんのCMが大量投下され、認知も一気に広がりました。

発売当時のリリースはこちら:

『自分の健康は自分で守る』大人のための乳酸菌飲料 カゴメから、「植物性乳酸菌 ラブレ」 新発売 ~腸で生きぬく力が強い、植物性乳酸菌ラブレ菌を使用~/2005年1月5日プレスリリース

カゴメ株式会社HPより:2005年1月5日プレスリリース

ラブレ菌をはじめとする多くの乳酸菌には免疫賦活作用(免疫を活性化する作用)があることが知られています。ラブレの中には植物性乳酸菌「ラブレ菌」が生きたまま入っているので、乳酸菌が手軽に摂れる食品として有名です。

この「ラブレ」のすごい部分をひと言で言うと、

免疫力を高めるラブレ菌、「おいしさ」と「保存性」を損なうことなく家庭にお届け

です。

この商品に関する特許は下記です:

特開2014-209921
原出願日:2007年5月31日
発明の名称:発酵飲食品およびその製造方法
出願人:カゴメ株式株式

商品名の「ラブレ」の由来は乳酸菌の一種であるラブレ菌KB290(Lactobacillus brevis KB290の略称)です。

このラブレ菌は、ラブレ菌は古来より食されてきた伝統的な京漬物「すぐき」から発見された植物性乳酸菌であり、カゴメが公開特許の中では身近な「しば漬け」から菌を取得したと明記されています。

「だったらこのラブレ菌を大量に入れた食品をつくったら簡単に売れるのではないか?」

こんな疑問がわいてきますよね。

ここが「食品」の難しいところ。

仮にその商品に「免疫力を高める効果」があったとしても、美味しくなくてもあなたは買いますか?腐っていても家族に食べさせますか?

特許の中でこの商品は「発酵飲食品」と記載されているのですが、商品化したときの「美味しさ」と「保存性」が大きなポイントになっています。

ラブレ菌は、健康にはよいものの、その取り扱いが非常に難しいのです。

商品に生きたまま残る菌の数が少なすぎると発酵が進まずに効果を発揮しないし、逆に多すぎると購入して冷蔵庫で保存した後も発酵が止まらず、味が格段に下がる……。

なるほど。発酵しすぎてもだめなのですね。

発酵は頃合いが難しい……(イメージ)

そこでカゴメは、ラブレ菌を入れた商品を発酵させるとき、リンゴ酸もしくはフルクトース(=果糖)を少しずつ加えてpHを調節することで、ラブレ菌の数をちょうどよい塩梅に着地させることに成功したのです。

酸・アルカリの度合い(強さ)を表すpH。数値が低いほど酸性に近づく。

pHが高すぎる(アルカリ性により気味)だと菌の増殖が止まらず、保存後も発酵が続いてしまい味や香りに問題が出るし、pHが低すぎる(酸性により気味)と発酵が抑制されすぎて、「免疫力を高める」という役割のラブレ菌の数自体が減ってしまいます。

この間の微妙な位置に着地するような量、添加するタイミングを含めた製造方法を発見し、それを特許しているのですね。

ラブレ菌というのは、言うなれば「乳酸菌のゆりやんレトリィバァ」なのです。

ピン芸人の存在感としては抜群。まわりをゲラゲラ笑わせて、「笑いの効果」は他とは比べものにならないぐらい「優良」です。

でも、例えば、ゆりやん一人がずっとテレビでボケ続けている番組って見続けられますか?私はちょっとキツイ…… 要は、アクが強いのです。

そこで、いい感じに彼女をひろってくれる陣内智則や千原ジュニアが必要なわけです。

彼ら共演者がいい感じに中和することで、ゆりやんのアクの強さが調整され、ベストな状態で視聴者に刺さるのです。

ラブレ菌も同じ。単独で十分に優れた素材ではあるものの、そのままだと「効果を発揮しすぎてしまう」という悩みがありました。食品たるもの、やはり「美味しさ」は避けて通れません。一般家庭に届けるためには、スーパーを出たあとの保存性も大事です。

そこで、リンゴ酸やフルクトースという「共演者」を加えて、ラブレ菌の数の推移を調整し、「免疫力を高めるために必要な菌数」と「美味しさ・保存性」を両立させたベストな状態に着地させるのです。

ラブレ菌をどうやって「美味しく」届けるかを研究し続け、消費者が購入した後の「保存期間」についてもちゃんとフォローしているカゴメさんにアッパレです。

生きた状態のラブレ菌がたくさん入っているこの商品、Amazoフレッシュでも購入できますので、よろしければ覗いてみてください。

発酵素材にもあった!「ロバート」効果【サントリーウェルネス株式会社】

次にご紹介するのが、サントリーが研究・開発した発酵食品。

こちらは先に特許をご紹介します。この特許、内容はシンプルですが非常に面白い切り口です。

該当の特許はこちら:

WO2006/093267
国際出願日:2006年3月3日
発明の名称:免疫調節作用を有する発酵組成物
出願人:サントリー株式会社

まだ「サントリー株式会社」の時代に公開した特許です。

この特許文書に記載されている技術内容をシンプルに書くとこうです。

乳酸菌を使って発行させた昆布を単独で摂取するよりも、同じく乳酸菌で発酵した胡麻、大豆と合わせて摂取すると、免疫賦活作用(免疫を活性化=高める作用)がより大きくなる。

公開されている特許には、「乳酸菌を使って発行させた昆布は免疫力向上の効果がある」と記載されています。昆布、乳酸菌について下記のように明記されています:

日本においては古くから海藻を食する習慣が根付いており、特に昆布は強運食、長寿食とされ、精進料理にも含まれる伝統食材である。海藻は、不足しがちなカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、リン、鉄、ヨードなどのミネラルや、各種ビタミン、フコイダンなどの食物繊維を豊富に含有する食品であり、免疫調節作用を有することも明らかになっている。

WO2006/093267より引用

興味深いのが、同じように乳酸菌で発酵した他の素材を一緒くたにして製品をつくった方が、免疫力に関わる数値が改善したということです。

その素材が「胡麻」「大豆」なのです。

サントリーは「胡麻麦茶」など胡麻に関する知見も豊富(画像:サントリー食品インターナショナル公式WEBページより)
大豆といえばSOYJOYの大塚製薬ですね(画像:大塚製薬 公式WEBページより)

発酵食品として、昆布単独でも有効な作用あり!なのですが……

おもしろいことに、各原料を個別に摂取し、乳酸菌も別で投与した場合と比べ、3つ一緒にしたものを摂取した場合の免疫力に関する数値が明らかに改善されていること。これがマウスの実験を通して証明されました。

これ、言うなれば、3人で活動するロバートに見られる効果と同じです。

ロバート秋山さんだけで十分おもしろい。大きな笑いを提供してくれます。そして、他のお二人もそれぞれはそこそこの面白さ。

笑いの力を例えるならこんな感じでしょうか。

ロバート秋山さん…7
ロバート山本さん…3
ロバート馬場さん…2

7+3+2=10

それぞれピンの力を合わせると10になるのですが、

「ロバート」という「3人一緒」の状態になると、なぜか一気におもしろさがアップします。特にコントはなんともいえないツボがありますよね。思わず大爆笑しちゃいます。

ということで、バラバラから3人一緒になったときの状態を数字で表すとこうなります。

ロバート3人:10 → 15!

今回ご紹介した発酵食品の特許の中でも、こんな現象が起こっているのです。

昆布単独でも一定の効果がある。他の素材も健康食品としては有名。けれども、その3つを「同時に発酵させて3つが合わさった商品」にすることによって、大きな効果が発揮できたのです。

ロバートと同じ、まさに組み合わせの相乗効果ですね。

サントリーの研究員ははこれを発見したのですね。

この特許が公開されたのと同時期に、サントリーは「自然のちから 胡豆昆発酵粒」という健康食品(丸粒タイプ)を発売しています。

2005年の日本食糧新聞社の新商品ニュースで配信された記事が残っています。

2005年5月20日リリース(食料新聞社 公式WEBページより)

商品はこんな感じだったのですね。

しかしながら、この商品、すでに販売終了しています。

残念です!

まぁ、健康食品のサイクルは短いですから。

商品は終売しても、基礎的な知見は積み重なっていきますし、それを生かした新たな商品がどんどん生まれます。ブラッシュアップした商品、市場によりマッチした商品が投入されるのが健康食品市場なので、現在のラインナップを一度覗いてみるのもよいかもしれません。

サントリーウエルネス社はラインナップも豊富です。

気になる方は公式WEBページ内の「売れ筋ランキング」をチェックしてみてください。

おわりに

以上、この記事では『特許も公開済!有名企業が発売する免疫力を高める食品はどこがすごいのか?』と題して、カゴメ社とサントリー社の特許技術、その技術を使って設計・発売された商品をご紹介しました。

「免疫力アップ」というキーワードは間違いなく食品業界の新しい柱になりますが、どのメーカーからどういった裏付けで出ているのかをしっかりチェックして購入しましょう!

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。