中国の上海では現在、第2回中国国際輸入博覧会(11/5~11/10)が開催されています。
そこから昨夜、ホットなニュースが飛び込んできたのでシェアします。
ニュースの概要はこちら:
『MARS中国がレトルト食品を発売!狙うは中国のひとり飯』
参考にした記事:
瞄准“一人食”,糖果巨头玛氏首推方便食品,四季度试水中国市场!/食品板2019年11月9日配信ニュース
MARSって聞いて「どこの会社?」と思ったあなた、この商品を見れば一目瞭然ですね。
スニッカーズやm&mを展開する、チョコレート菓子の世界トップ企業です。日本でもおなじみですよね。中国語では「玛氏」と書きます。
目次
具体的な展開内容
ポイント
ニュースのポイントをまとめるとこうです。
- MARSが簡便食品市場に初参入
- 商品はレトルトご飯
- オリジナルブランドを立ち上げ
- 炒める、のせる、混ぜる、チンするの4タイプで展開
- レトルト食品商品は初展開、中国のみで展開
- 今年中にテスト展開、2020年に正式発売
ニュースによると、MARS中国は今後「健康食品」に力を入れると発表。新ブランド「我的食刻(MasterFoods)」でレトルトご飯シリーズを展開するとのことです。
ちなみに、「我的食刻」というブランド名はさすが上手につけたなと感じます。「食刻」の部分、中国語がわかる方なら頷く部分だと思います。
MARS中国は1年の時間をかけて中国人のためのブランド「我的食刻」の準備をしてきました。火を使って炒めるタイプ、ご飯にのっけるだけ、常温で混ぜるだけ、チンするだけの4タイプを展開し、消費者の選択肢も増やしています。
展開ラインナップ
肝心の商品展開内容ですが、下記4つになります。
・タイ式レモングラスライス
・マレーシア式ココナッツバスマティライス
・日本式ヘルシーキヌアライス
・濃厚鶏がら黄金スープライス
個人的にはココナッツバスマティライスが食べてみたい!
使用する米にもこだわっていて、インド産の香り米、スペイン産の長粒米、アメリカ産の玄米など、世界中の有名な米産地から仕入れています。
なぜ中国を狙い撃ちなのか
答えは簡単。単身市場が絶賛拡大中だからです。
日本も同じ流れがあるので、わかりやすいですよね。単身世代が増え、個食市場が絶賛拡大中です。
しかし、日本では高齢化や共働き子育て世代など、どちらかというと30~40代、60~70代の層に着目した商品が覆いです。
MARS中国が今回発売する商品のメインターゲットは20~30代。かつ、この世代の単身消費者です。
中国の単身人口って、どのぐらいだと思いますか?
実は2.4億人!!
単身人口だけであっさりと日本の人口超えですね。
そして注目すべきはその中の20~30代の層。
この層、いわゆる「ひとり飯」がひとつの食シーンとして根付いているのです。お店に1人で入って食べたり、家で1人で食べたり。日本でも「ひとり焼き肉」が流行りましたよね。
中国の20~30代の若者は、「ご飯は大勢で食べるもの」という中国の文化から少し離れた考え・生活スタイルをもっているのです。
中国では食事のデリバリーサービスが非常に進んでいるのですが、その大手「美団デリバリー」が2018年に発表した情報によると、2017年のデリバリー発注数のうち、20~30代の発注者で65%を占めていたとのこと。
別のデータでは、この層の若者は「安い」だけでは購入につながらず、そこに「速くて便利」が必要ということが言われています。
ひとり飯 × 若者 × 早くて便利
この方式で商品具現化を目指した結果が今回のレトルト食品というわけですね。
中国国際輸入博覧会でMARS中国がこの商品を発表した際に、このようなことを付け加えています。
「現在最も重要視していることは、中国市場をあらゆる事業の中心に置くこと。ただ中国で生産して中国で販売するだけでなく、中国の消費者の好みに合わせた商品、人気のあるテーマを軸に商品展開をしていく必要がある。今回のレトルトご飯はこの考えが生み出したものだ」
食品版配信ニュースより引用
レトルト商品を含め、中国のインスタント食品市場は今もなお大きく拡大しています。今年だけで米飯類、火鍋、お粥など様々な企業が新商品を展開しています。
注目すべきは、中小企業の展開だけでなく多品目のブランドを保有する総合食品メーカーの参入が目立つこと。このような動きは「中国の大インスタント時代」がすぐそこにやってきているということを物語っている、と記事は締めくくっています。
今回のニュースを読んで
今回のニュースを読んで思ったことが2つあります。1つは中国のインスタント市場について。もう1つは世界的食品メーカーのエリア限定ブランド展開について。
インスタント市場について
まず、中国のインスタント市場についてですが、今後も加速度的に拡大するのは確実です。上海で生活する中で、私もよくデリバリーサービスを使っていました。
日本では年に1~2回ピザの宅配を頼むぐらいでしたが、なぜそんなにも利用するようになったのでしょうか。
インターフェイスがシンプルで決済の流れもスムーズ、というシステム方面の便利さは今回割愛します。
私がお伝えしたいのは、「心理面」について。日本人と中国人の考え方の違い、ですね。これは非常に面白いです。
上海に引っ越したのは2015年。人々の生活の中でデリバリーサービスはすでに「普通のこと」になっていました。
中国語教室で授業があったある日のこと。お昼をまたぐ授業だったので、ビルの下のカフェに1人でお昼ごはんを食べにいこうとしたとき、デリバリーサービスの配達員の方がちょうど入ってきて教室の先生にお昼ご飯を手渡しました。
1食分だけ。
そのときの会話が非常に印象に残っています。
先生「Kao、あなたも次から頼みなよ。一緒に頼んであげるよ」
私「下にコンビニもあるし、この辺カフェもいっぱいあるし、食べにいかないの?」
先生「デリバリーだと温かいし。しかも安いしすぐ来るし」
私「でも、1食分って、頼むのなんか申し訳なくない?」
先生「全然思わない。なんで?」
私「いや、1食分だけだし、買いにいく方がいいかなって思っちゃう」
先生「なんで?時間もったいないじゃん。面倒だし」
日本人って、デリバリーを利用するとなると、ちょっと申し訳ない気持ちになりませんか?インスタントやレトルトを使うのは悪ってイメージ、何となくありませんか?子どもには手作りご飯を出さないといけないとか。
中国人は日本人と違って超合理的なので、「便利なんだから」「安いんだから」「美味しいんだから」などはっきりとしたメリットがあると、「でも何か申し訳ないし」というわけのわからないもやっとした理由で止めたりしないのです。
こういった文化の違いが、インスタント市場の急速な拡大に貢献していることは間違いないと感じています。
「便利なんだから使ったらいいじゃん!」
まさにシンプル。
もちろん、健康の問題や日本人が気にする「インスタントを出すのは申し訳ないかも」という思いがないわけではありません。
しかし、日本人が「外」の基準で色々なことを気にするほど、中国人は気にしません。これが事実です。
ひとり飯という食シーンも、デリバリーサービスの拡充とともに一般的なものになっています。現在の若者はそのスタイルが生活の一部になっているので、中国人の中で「ひとり飯に最もに抵抗がない世代」と言えます。
中国という大きな市場の中でインスタント食品がどのように変化していくのか、どのような面白い商品が生まれるのか、世界中が注目しています。
世界的食品メーカーのエリア限定ブランド展開について
世界的に有名な総合食品メーカーが特定の国(または地域)でオリジナルブランドを立ち上げる。しかも、全く新しい事業の展開をそこで始める。
先日もコカ・コーラ社の事例を記事にしました。コカ・コーラ社が初めて酒類市場に参入し、それが日本限定での展開という内容です。
コカ・コーラ、酎ハイを全国展開 酒類市場に本格参入
终于来了!可口可乐将推出酒精饮料,烧酒苏打水产品10月在全日本上市!
この流れはしばらく続くと注目しています。
「餅は餅屋」だけではもう通用しなくなってきているのです。
特に、世界的な健康ブームの中で糖分カット、炭水化物カットの動きがより広がっています。今では「寿命」ではなく「健康寿命」の方が注目されています。
この流れから、菓子類のメーカーは徐々に厳しい立場になりますし(私はこの次にお酒が厳しくなると考えています)、今回のMARSもそういった理由はあったはずです。中国の市場に参入する準備を1年間してきたと発表がありましたが、商品設計は最低でも2~3年はかけているはずです。当たり前ですが、早くから準備をして動いています。今まさに準備中の企業も(出てきていないだけで)たくさん存在しているはずです。
そのときにキーとなるのは、日本が選ばれる市場かどうかということ。
今後どうのような商品が出てくるのか、どんな企業が予想を裏切るブランド展開を始めるのか、注目ですね。
続報があったらまたシェアします。
取り急ぎ速報でした!
※ちなみにコカ・コーラ社のチューハイは発売日に購入して飲んでみました。レモンの味がしっかりしていて、期待を裏切る?美味しさでした。細部にもこだわったパッケージデザインが素晴らしく、また手に取りたいなと思わせてくれる一品でした!