最近、新型コロナウイルスの影響もありテレワークが一気に拡大しましたね。これを機に「在宅勤務」がデフォルトになる職種も増えるのではないでしょうか。
一方で、こんな質問をいただきました。
「在宅勤務ってなんだかスイッチ入らないね。いつもどうしているの?」
――この疑問にお答えすべく、今日は私がやっている会社にいかなくてもやる気スイッチが入る方法をお伝えします。
私は普段ずーっと家にいる在宅翻訳者ですが、決まった時間にちゃんと「翻訳脳」が起動するように、毎朝とあることをやっています。
私はこの3つの習慣を「朝の3スイッチ」と読んでいます。
自分の頭や体の中にいくつものスイッチがあって、そのスイッチを「パチッ」「パチッ」とひとつずつオンにしていくようなものですね。
スイッチは全部で3つあります。
- 体のスイッチ
- 日本語のスイッチ
- 中国語のスイッチ
です。
【スイッチ1】体のスイッチを入れる
私はベッドから出るとその足で水を飲んで顔を洗い、朝食と夫のお弁当をつくります。
準備ができたら、3スイッチのスタートです。
朝食をお腹に入れる前に、まずは「体のスイッチ」を入れます。
具体的には筋トレをします。
フローリングではなくラグが敷いてある部屋にいき、腹筋・背筋を各50回、腕立て・逆腕立てを各20回やります。
この筋トレは夜にやっていた時期もありますが、ここ数年は朝にやっています。
ちなみに逆腕立てとはこういう感じです。
この筋トレをやっている最中に、体の中にばーっと血が巡っていくのがわかります。体が完全に起きるのがわかります。
運動するとアドレナリンが出るので、無料で押せるやる気スイッチのようなものです。回数は少なくてもよいので、騙されたと思ってやってみてください。
この筋トレが終わった後に朝食を食べます。食べてから筋トレすると「おぇっ」となるので朝食の前に実施しています。
なぜこれを一番初めにやるかというと、
脳みそも体の一部だから。
先にその「体」が稼働するようにスイッチを入れて、脳みそまでのガソリン(血液)の流れをよくします。まずは母体の大きな方にエンジンをかけていきます。
【スイッチ2】日本語のスイッチを入れる
朝食はしっかり食べます。その後、日経新聞を読みます。(食べ終わってから読もうと思うのですが、いつも食べ終わる前に同時並行で1ページ目を広げてしまいます……。よくないですね。)
最初、コラム(日経の場合は「春秋」)を読みます。このときに、声に出して読む、語尾をですます調に変換して読む、ということをしています。
これはどこかの翻訳会社サイトか書籍で「翻訳者がやっていること」として目にしたことなのですが、すみません、どうしても思い出せません……。
コラム音読が終わった後は、普通に読んでいきます。
気になった記事は切り取って、ポイントとなる部分には蛍光黄色のマーカーを引いています。美しい言い回しや面白い表現もマーカーを引いて残しています。
新聞の中身すべてを読んでいるわけではありませんが、できる限り本文に目を通しています。
朝、「日本語の基本」である新聞を前のめりになって読むことで、私の「日本語スイッチ」が入ります。
日本人だからといって、日本語を読むときにエネルギーはいらないということはないと思います。活字を通して新しい言葉や少し難しい内容などに触れることは、少なからず「負荷」がかかります。その「負荷」がある意味、心地よくもあります。準備運動には丁度よい素材です。
新聞は言葉のプロが書いているので「正しい日本語」であることも嬉しいところです。質のよい日本語のシャワーを毎日一定時間浴びることは、翻訳のお仕事にも大いに貢献していると感じています。
それが「専門書」や「ハイレベルな材料」でなくてもよいのです。一番身近な新聞をしっかりと丁寧に読み込み、自分の中に取り込んでいくことは、誰でもできる一番簡単な「日本語ストレッチ」だと思っています。
割と時間をかけて、30~40分ほど新聞と向き合っています。もちろん情報収集も兼ねています。新しい分野の展示会やセミナーに参加したあとは、切り取っている記事の傾向が変わっているのがわかります。
【スイッチ3】中国語のスイッチを入れる
日経新聞を読み込んだ後は、中国語ニュースに目を通します。
こちらは毎朝配信される、中国人向けのものです。
中国国内トップニュース、国際、社会、経済、文化などのカテゴリに分かれて、テキストと写真で構成されています。
文字数は3000文字程度です。
それを声に出して、さも舞台に立って発表しているような感じで音読していきます。もちろん内容も頭で理解しながら進めます。
恥ずかしいですが、リビングを歩き回りながら、自分のことをジョブズだと思って(ジョブズファンに怒られるな……汗) 熱を込めて、かつリズミカルにスピーチしています。
固有名詞など、特殊なものの発音がわからない場合はスルーして進みます。
文法や係り受けが明確でなくつまってしまったものは、文章構造がはっきりするまで立ち止まって考えます。
なぜ音で読むかというと、中国語は漢字なので「読めている錯覚」に陥ることがたまにあります。そこで音にして自分の耳に聞かせます。
もうひとつ、中国語は私の中に「音で刻まれている」部分が大きく、発音を口から出すことで脳の中の「中国語ゾーン」が刺激され、一気に中国語モードになるのです。
自分の中の「中国語スイッチ」が入るのがわかります。
この「中国語スイッチ」に費やす時間は15分程度です。そんなに長くないですよね。
中国の一次情報を収集するという目的も兼ねています。
私の「体スイッチ」「日本語スイッチ」「中国語スイッチ」のご紹介はここまでです。
この3つのスイッチを入れ終わった後、自分の机に移動して翻訳のお仕事をスタートさせます。
逆に言うと、私の場合はこの3つのスイッチを入れずに翻訳をやれというのも難しいですし(できるとは思いますが、本調子ではないでしょう)、翻訳以前に、景色の変わらない家の中で「在宅仕事」をするのが難しくなると思います。
ポイントは「動」「声」「変」
この3スイッチを見て、「私は翻訳者じゃないから参考にならないや」と思いませんでしたか?
実はそれ、大きな間違いです。
このスイッチには隠れたポイントがあります。
それはズバリ「動」「声」「変」です。
まずは「動かす」こと。
3スイッチでは筋トレをして体を動かしました。シンプルにお伝えすると、体って一度激しく動かさないとずっと寝たままです。普段の生活では「通勤」がこれにあたります。
通勤は必ず一定時間以上の歩行がありますし、階段を上り下りします。それを30分から1時間って、けっこうな運動量ですよ。普段は全く意識していなくても。
その証拠として、在宅翻訳者になりたての人は、だいたいの人が体重増加します。(私もそうでした)
家から出ないと体って動かしようがないのです。なのでまずは「体を動かすきっかけ」を自分で作ることが何よりの近道です。
次に、「声を出す」こと
外に出なければ誰とも話すことはありません。
実は「声」は意識レベルを高めてくれます。大声で歌っているときに眠気を感じたことってありますか?
会社に行けばまずは「おはようございます」と言いますよね。そして何気ない会話が始まることも。
これ、意識していないですが頭のスイッチを入れるのにかなり貢献しています。
しかし、家では会話する相手なんていません。なので私は「新聞を声に出して読む」というステップを入れているのです。
会話でなくても、独り言でも、「声」を出すことがポイントです。
最後に「変える」です。
視界に移る景色が「変わる」、目の前にいる相手が「変わる」、聞こえてくる音が「変わる」――これ、出勤していると当たり前に起こることです。この「変化」が刺激となって頭のスイッチを入れてくれます。
逆の言い方をすると、「いつもとは違う」「慣れた方法ではない」という状況になったときに頭の中の状態が切り換わります。そこには一定の「負荷」が必要です。
家の中でその状況を実現するのは難しいですよね。
なので私は朝一番に中国語を読んでいるのです。スマホやテレビで発信される日本語のニュースだと(理解するということに)それほどの負荷はかかりませんから。あえて「少し難しいレベルの中国語ニュース」を選んでいるのです。
みなさんの身近にある「負荷」は何ですか?
いつもと同じ朝にあえて「いつもと違う方法」を組み込んでみてください。少しの時間で大丈夫です。
ご自身の職種や生活環境に合わせて、ぜひ試してみてくださいね。
在宅勤務にはありがたい「副次的効果」
在宅勤務者にはありがたい副次的効果もあります。
- 肩こり・腰痛が今のところない
座りっぱなしなのでいつかは腰痛になりそう…… なんてかなり前から思っていますが、短い時間でも毎日ストレッチ&筋トレをしているためか、腰痛・肩こりともに今のところありません。目覚めのためにやっていることですが、体のメンテナンスとしても貢献してくれています。
- その日の調子がわかる
毎日同じ時間に同じことを同じ量だけやる。これを毎日繰り返していると「あれ、今日ちょっと調子悪いな」というのがわかるようになります。「中国語のリズムがのってこないな」と微妙な差に気が付くこともあり、そんなときは昼間に違う読み物(中国語)を少しだけ読んだりします。
また、筋トレでは体に疲れが溜まっているとなんとなくわかります。そんな日は少しだけ早めに切り上げて、ゆっくりお風呂につかるようにしています。
以上、私がやっている朝の3スイッチでした!
たった3ステップ、されど3ステップ。
こういった地味な工夫で、いい加減な私でもなんとか在宅翻訳者として活動できています。
同じように在宅でお仕事をされている方の参考になれば幸いです。